~紅龍の夢~

巻の二 THE JEWEL BEARER ─貴石を帯びし者─

- あとがき -

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
ご意見ご感想などありましたら、メールフォームから送っていただければうれしいです。
サマエルは何を笑ってたんでしょう、それはご想像にお任せで。

ところで、この<巻の二>は、シリーズの中で一番最初に書いたお話なんです。
いえ、初めて書き上げた小説って言った方が正確でしょうか。
中学生の頃、ホラーっぽいのをちょっと書きかけたことはありますが。

というのも、この話、いきなりジルが行方不明になるところから始まってますよね?
連載開始にあたり、読み手の皆さんがついて来られないと困ると思い、急きょ<巻の一/パンドラの箱>を書き足したんですよ。

つまり、巻の一はそれ自体、人物紹介を兼ねた「紅龍の夢」全体のプロローグなんです……長いプロローグもあったもんですが(笑)。
しかもこの話、当初はジルが主人公の、ラブコメでした。
──主人公がいきなり行方不明かい!(と、一人ツッコミ)

これを書き終えたとき、うれしくて……何しろ、生まれて初めて小説ってもんを完成させたんですから、浮かれてわざわざワープロで印刷、文庫本サイズに製本し、表紙もつけて、世界でたった一つの本を作っちゃったくらいでした(笑)。
あとがきを見ると、書き始めは1998年の10月下旬で、翌年2月に書き上がってます。
その後、手直しして、製本し終わったのが4月でした。

以下は、そのあとがきの抜粋です。

『以前、妹がマンガの同人誌を作ってたことを思い出して、絵がダメなら文章でと、軽い気持ちで書き始めてしまい……。
だから、話の中で登場人物が「なぜ」「どうして」と言ってるときは、実は自分が、マジにその理由を考えてるとき、という情けない状況だったのでした。
あらすじ考えてから始めればよかった……よく最後まで書けたなぁ……(汗)。

それでも時々、小説のシーンが、まるで映画かテレビドラマみたいに、とってもリアルに目の前を流れていくという、不思議な体験もしました。
そして、そのシーンが消えたらすぐに、忘れないように急いで見えた通りに文章に書いたものでした。

最初の、タナトスがサマエルをつるし上げてるシーンなんかがそうです。
お陰でここはすらすら書けました……全部そうなってくれたら楽なんですけどね(笑)。
私が書いたと言うより、まるで物語の方が私を使って外に出てきたみたいな、不思議なカンジでした。
私自身、次はどうなるんだろう? とわくわくしながらそれを見ていて……つまり、一番最初の読者は自分だったんですね。

1999年 4月』