ヴァンパイア・ゴーレム
(あとがき)
『戦好きなこの星の人間は、人形に命を吹き込んで兵士とし、代理戦争を楽しんでいた。
やがて人形の中から、感情を持つ者達が現れる。
彼らは人間の支配を拒み、人形対人間の戦争が始まった。
初め、形勢は圧倒的に人間が不利だった。
だが人間が肉体を改造し、互角に戦うようになると、戦争は膠着状態に陥る。
数百年後、対峙する最後の人間と人形。
壮絶な一騎討ちが終わると、荒廃した死の星だけが残された。
不時着した異星人に、人形の兵士の残留思念が語る、滅びの星の物語』
最初に考えたのは、こんな感じの話でした。
その後、何年か経って、マトリックスを見、アニマトリックス(マトリックスのアニメ版)を見て、なんか似てるストーリーだなーと思っているうち、どんどん話がふくらんでいきました。
だもんで、“ネオ”や“スミス”や“アンダーソン”なんて名前が出てきます。
でも、書いてるうちに、マトリックスからどんどんかけ離れていきましたが……(笑)。
人形に命を吹き込む、っていうと、どうしてもファンタジーになっちゃうんですよね。
(これがそもそも無理な設定か……笑)。
それでも一度、ファンタジーから……というよりか、『紅龍の夢』とはまったく無関係な物語を書きたいと、ずっと思ってまして、今回ようやく書けたことで自分では喜んでおりますが、SFとしてはいかがなもんでしょうか(汗)。
ご感想等、いただければ幸いです。
ちなみに、オラムは、オーラム(金=元素記号Au)、アージェは、アージェンタム(銀=同じくAg)から名前を取っています……まんまですね。
2005年5月6日
二年ぶりに全面改訂しました。
途中まで読んでた方、もしいらっしゃいましたら、ご迷惑をお掛けしてすみません。
ずっと手直ししたいと思っていたのですが、なかなか暇と気力がなく、直す直すと言いながら、二年も経ってしまいました(滝汗)。
最初の方をSFっぽくし、オラムとアージェの関係にももうちょっと踏み込み、そしてご要望の多かった、スミスのプロフィールを少し詳しく書き込んだら、三ページほども増えてました……。
2007年5月1日改定
追記:
この小説に出て来る“母星”には、名前がありません。
あ、手を抜いてつけなかったわけじゃなく(笑)。
住人達は、自分達の星のことを、単に“星”と呼んでいたんです。
“この宇宙で唯一、人類が住んでいる星である”ことを誇示するためだと思われます。
(宇宙は広いので、実際はそうじゃないわけですが…笑)
NEO・BIRTHに移住した人々は、“星”だけだと紛らわしいので、“母星”と呼びました。
というわけで、この話は、地球とは無関係の、どこか遠い星の出来事です(笑)。
ところで、移民達は母星からの完全独立を目指していました。
というのも、母星に残った人々は、宇宙植民などうまくいくはずがないと、出ていく彼らをあざわらったからです。
他の星に進出されてしまうと、自分達の星が唯一無二の存在じゃなくなる、ってこともあったでしょう。
それでも、旅立った当初は定期交信が行われていたのですが、数年後、いきなり途絶。
混乱を極めた最後の通信で、激しい戦いが起きたらしいと分かったものの、移民達はわざわざ母星に戻ったりはしませんでした。
移民先での生活が軌道に乗ったら、母星が色々と干渉してくるのではないかと
元々母星では、人口増加や環境問題等のため、各国が一触即発の状況だったので、核戦争でも起きたのだろうと片付けられ、母星の滅亡に対して一応の喪には服しましたが、それだけでした。
自分達のことで精一杯だったこともあり、母星のことは徐々に忘れられていったのです。
一方、移民は成功ました。
比較的近くに、少し改造するだけで居住可能な惑星が三つあったのも幸いし、当初数十万人だった人口も、順調に増えていきました。
しかし、利害の衝突から、それらの惑星間で戦争が起こります。
直接の戦いは比較的短期間で終わり、和平が成立したものの、経済は疲弊し、NEO・BIRTH政府に対する人々の不満は募りました。
それらをそらすためもあり、母星の再発見プロジェクトが立ち上げられたのでした。
スミスはそれに気づいていて、政府のプロパガンダに乗せられるのは、まっぴらごめんだと思っていました。
だから、自分の経歴などが放映された時、政府に利用されると思って怒ったわけです。
最後に、スミス船長の名前の由来を書いておきます。
フォルティス(fortis)ラテン語 強い
ナーハフォルガー(Nachfolger)ドイツ語 後継者
スミス(Smith)古英語で「職人」を意味し、鍛冶師(blacksmith)や金細工師(goldsmith)、銀細工師(silversmith)、スズ細工師(tinsmith)、ブリキ職人(whitesmith)等、特に金属加工の職人を示す。
2007年12月16日