~紅龍の夢~

巻の四 THE RED DRAGON'S SEAL ─紅龍の封印─

―あとがき―

<巻の四>終了しました。
長い物語にお付き合い下さいまして、ありがとうございます……って、これ、毎回言ってますね(笑)。
ただし、今回は、特に長かったと思うのですが、その理由は二つあります。

まず一つ目。この巻は前後編の二部構成である、ということ。

二つ目の理由。
実は書いた当初、この巻で“紅龍の夢”は完了する予定でした。
<巻の一>は後から書いた話なので、“貴石を帯びし者”、“幻夢の迷宮”、“紅龍の封印”前後編、この四つで物語は完結するはずだったんですよ。
最後だからと、いろいろ詰め込んで(笑)。

ストーリーが破滅的(笑)なのも、ここで世界が終わることになっていたからです。
紅龍はリオン達を殺し、その後どんどん膨張していってすべてを飲み込み、──ついに、ビッグ・バン(大爆発)。
旧宇宙はリセットされ、新しい宇宙が出来る。……ってな感じで。

一時は、元の設定に従って本当に終わりにしようか、なんて誘惑に駆られたりもしましたが、そうならなかったのは、知人の一言のお陰でした。

この巻のストーリーを考えているとき、最初に浮かんだのは、「ライラがリオンと会い、ダイアデムを召喚する」シーン。
次は話が結構飛んで、「ダイアデムがシンハに変身、そのあとサマエルに過去を告白する」ところ。
そして、三番目が、「サマエルが“焔の眸”を破壊する」シーンでした。
(これら印象的なシーンをどうつないでいくか、それで悩みましたが)
つまり、当初から“焔の眸”を消す予定でいたのに、そこまで書き進めたら、行き詰まってしまいました。

他の話も何も書けないまま、半年ほど経ったある日。
小説やマンガ好きな知人に、何気なく、行き詰まってることを話したんですよ。
「今小説書いてるんだけど、途中でなーんか書けなくなっちゃって。
光瀬龍の小説みたいに、世界が破滅して終わり、にしようかなあって思ってるんだけど」
……みたいに。
(光瀬龍氏は日本のSF作家。“無常観”が特徴のお話が多いかも)

そしたら、彼女は、こう言いました。
「ああ、光瀬龍ね、嫌いじゃないし、そういう終わり方も悪くないと思うけど。
でも、ああいう終わり方って、なんかさ、救いようがないっていうか、一人ぼっちで放り出されちゃってすっごく淋しい、って感じにならない?」と。

なるほど、と思いました。
光瀬氏は好きで、よく読んでましたが、たしかにそういう気分になりましたし。
胸の中を風が吹き抜けていくような感じ、っていうのかな?
そこで、バッドエンディングは中止(単純…笑)。

では、どうやって話を続けようか? 
まずは、サマエルに、生きる気力を出させなくちゃってことで、“焔の眸”を復活させることにしました。
そこで登場したのが、“盲いた眸”です。
この宝石が、透明なまま何の精霊も宿らなかったのは、“焔の眸”か“黯黒の眸”が何かの理由で壊れてしまった時のための“予備”だったから。
この石には、もう一つ役割があったのですが、その話は、巻の六あたりで出て来る……はず。

19話で説得が必要だったのはタナトスじゃなく、実はサマエルなんですよ(笑)。
元々、ここで物語は終わり、彼は死ぬはずだったんですから。
そして、最初のときには、タナトスもサマエルには同情しないままでした。
でも、それだと巻の六にうまくつながりませんので、精神的にかなり成長を遂げたことにして(笑)。

これ書き始めた七、八年前には、ワープロ使っていて気軽にプリントアウトができたので、自分で文庫本サイズに印刷、糊付けして、紅い、革表紙に似たレザックという厚い紙を表紙にした、世界にたった一組の手作り本が、今も手元にあります。
当時のあとがきを今読むと、そのときの自分の心境が分かり、ちょっと笑えますね。
後半の方が少ないと思っていたら逆で、前編が320ページくらい、後編が335ページくらいでした。

以前書いたように、巻の二も製本して一人で悦に入ってましたが、巻の一は連載直前に仕上げたので、本にはしませんでした。
巻の三も、連載しながら完結させた感じに近かったので、やってません(笑)。
それでは今後も、気長にお付き合い下さい。

 2007年10月12日